そいとごえすの退避ブログ

2019-02-21 はてダから移転。

きっこ氏の丸川珠代叩き

テレ朝の丸川珠代アナが退社し参院選に自民から出馬することとなった。それについて6月5日の「きっこの日記」が痛烈に皮肉っている。といってもそれは話の枕で本題は落語仕立ての安倍批判なのだが。以下に丸川批判部分を引用する。


まあ、それが政治家ってもんでして、今度の選挙に自民党から出馬することになった元テレビ朝日のアナウンサーの丸川珠代も、ちょっと前までは自民党のことをボロクソに言っていた上に、知名度だけで出馬するタレント候補のことも厳しく批判していましたねぇ。それが、どんな裏取引があったのかは存じませんが、自分がボロクソに言っていた自民党から、自分が批判していたタレント候補の1人として出馬するなんざ、あたしにはとてもマネできない芸当でございます。少なくとも、ツラの皮の厚さが2cm以上はないと、文字通り、これほど厚顔無恥な振る舞いはできません。ええ、できませんとも‥‥なんてぇことを言ってみた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしでげすか?


「ちょっと前までは自民党のことをボロクソに言っていた」? ご冗談でしょ。フリーの久米宏(@ニュースステーション)でさえ自民党批判をする時には相当に婉曲な表現をしていた。ましてや一介の局アナが、公の場で自民党をボロクソに言えるわけがない。もし過去にそんな発言があったなら自民党が激怒してテレ朝に猛抗議しニュースになっているはずである。

そんなニュースは記憶にない。「自民党のことをボロクソに」というのはたぶんきっこ氏の勘違いであろう。では、この勘違いはどこから来たものなのか? 
上で引用した枕の前半部できっこ氏は藤野真紀子佐藤ゆかりもこきおろしている。各氏の発言を引用していて具体的である。「自民党のことをボロクソに」言った事実があるなら、藤野・佐藤批判と同じように丸川氏のその発言を引用してみせればいいのに、なぜしないのか。どうも変である。引っ掛かるので検索してみた。


きっこ氏のネタ元は、どうやら日刊ゲンダイの記事「参院選出馬丸川珠代元アナ 過去の言動は「反自民」」(5/22)のようだ。日刊ゲンダイは、丸川氏は過去に与党の政策とは正反対の主張をしており(金子勝との対談本『ダマされるな!』で)、またタレント候補に対し否定的な意見をもっている、にもかかわらず自民から出馬とはどういうことか、と疑問を呈している。2点ともきっこ氏の皮肉とピッタリ重なる。
きっこ氏のネタ元がこの記事だとすると、きっこ氏は記事をよく読んでいないかニュアンスを無視している。記事で引用されている丸川氏のイラク問題に関する意見は内容も表現もずいぶんマイルドなもので、タカ派なら不快に思うかもしれないが、少なくとも“自民党をボロクソに”言うようなものではない。


タレント候補に否定的な意見をもっている、としてゲンダイが引用している丸川氏のコラムは、出典を見つけた。→ 脱・女子アナ宣言
2001-07-24号のコラムで丸川氏は、2001年の参院選選挙制度が変わり比例区が非拘束名簿式になったので候補者の個人名で投票できるようになった、という解説に続いて次のように述べている。


当選させたい人に投票できる、ということは有権者にとって満足度が高いはずです。勝手に政党が決めた人よりも、自分が望む人にこそ、政治家になって欲しいでしょう? ところが、もしテレビなどで顔や名前が有名な立候補者をたてて、たくさんの票を集め、党の議席を増やしたとしたら?

投票した人は立候補している個人を応援したつもりでも、実際には党を応援したことになります。まるで党が有名人の威(この場合知名度)を借りるようなもの。実際のところ今回の選挙では、“タレント候補”といわれる、テレビなどでの有名・著名人が立候補しているケースが、与党・野党を問わず見られます。もちろん、行政や政治の場で経験がなくとも、30歳になった時点で、すべての国民に参議院選挙の候補者になる資格(被選挙権)がありますから、有名・著名人であることだけで批判するのは、的外れでしょう。しかし、その人たちが集めた票を政党の得票とするのは、有権者の意思を反映することになるでしょうか。

(ゲンダイは前半部分を引用している。)

これはタレント候補に対する否定的意見ではない。参院比例区選挙制度に対する疑問提示である。
きっこ氏の元ネタが5月22日のゲンダイの記事だけで他に根拠がないのなら、「知名度だけで出馬するタレント候補のことも厳しく批判」や「自分が批判していたタレント候補の1人として出馬するなんざ」はとんでもない言いがかりということになる。

とはいえ、これで参院比例区から立候補していたら微妙にアレだったろうが、今回丸川氏が出馬するのは東京選挙区であり、比例区ではない。問題ないと思うぞ。選挙区候補といえど、丸川氏に投票すれば個人を応援しているつもりでも自民党に1議席を与えるべく票を投じているのと同じことだが、それはまた別の話である。


ということで、安倍政権を叩きたいからってヨタ記事をネタに候補者に関するデマを飛ばすのはよくないと思う今日この頃なのだ。